マドリッドでのワークショップ

2011.07.02

フェリックス・クラウスからマドリッド工科大学でワークショップをしてほしいと言われていた。なかなか行くチャンスがなくてもう2年ほど経ってしまった。 漸くチューリッヒの打ちあわせにタイミングを合わせて行くことができたので、イベリコ豚とカバでのんびりしてこようと思って行ってきた。もと山本事務所の スタッフで今bbrというへんてこな名前の事務所で活動している蜂屋啓二さんにも同行してもらった。

大学院生は30人弱、主に南アメリカを含むラテン系の国々から集まってきていたけど、中にはサウジアラビアからの女子学生も混ざっていて、相当の国際色で ある。課題は「地域社会圏モデル」である。地域社会というものをどのように学生たちが考えるのか非常に興味が合ったからである。

わずか4日間だったけど、みんなかなりがんばって、蜂屋さんもがんばってくれて、6グループの学生たちからはとても面白い提案が集まった。Y-GSAと基 本的には変わらない。「1住宅=1家族」という考え方を踏襲しない。新しい「地域社会圏」に相応しい居住方法を考える。場所は既に開発が進んでいる振興の 住宅地である。周辺は7〜8階建ての賃貸住宅が並んでいる。それがとてもいい。若い建築家たちがコンペで獲得した集合住宅である。日本に比べるとつくづく スペインの建築家は恵まれていると思った。

「ミスター・ヤマモト」サウジアラビアからの女子学生が言った。わたしんちはおじいちゃんの家があって、それはとても大きな家だ、それとお父さんお母さん の家、おじいちゃんには奥さんが他に二人いるから、その二人の奥さん一家の家、それはあまり大きくない。80平米〜100平米くらいかなあ。私の部屋もも ちろんある。みんな合わせるとかなりの大人数になるけど、それは「地域社会圏」と呼んでもいいか。という質問である。「その大人数の人たちの単位はなんて 呼ばれているの。」「コンパウンド:compound」インドでもコンパウンドと呼ばれている。インドネシアでは「カンポン」である。インドネシアの「カ ンポン」は「地域社会圏」に近い。親族集団ではない。でもそのサウジアラビアのコンパウンドは親族集団で、とても閉鎖的で周辺とは全く隔離されている。そ ういうゲイテッド・コミュニティーは「地域社会圏」とはちょっと呼べないだろう。実際その「コンパウンド」が外に対して開くなどということはちょっと考え られないという彼女の意見だった。都市の中の新しい住宅はほとんど「1住宅=1家族」でできているはずだから、そうした「1住宅=1家族」と「コンパウン ド」が混在しているような都市をつくったらいいんじゃないか、と言ったら納得しているようだったけど、できあがった作品は、まあ普通の集合住宅だった。で も、こういうことがあるから海外のワークショップは面白い。

架構方法を考えること、材料を考えること、住み方をかんがえること、Y-GSAと同じことを言い続けたけど、最後は手際がみんな良かった。チーズで模型をつくった学生がいて、素早くつくれる、どこでも材料が手に入るって自慢していたけど、さすがにマドリッドだ。
最終のジュリーにフェリックス・クラウスと吉良森子さんが参加してくれた。どうもありがとうございました。おかげで盛り上がりました。イベリコ豚とアンチョビとカバでちょっと太ってしまった。