2021年度ワークショップ「都市の庭」
横浜国立大学大学院Y-GSA
× 千葉大学園芸学研究院霜田亮祐研究室

2022.04.25

2021年度ワークショップ「都市の庭」 Vol.1 リサーチ・ワークショップ

テーマ:
都市の庭 – アーバンエコロジーを考える

参加大学:
横浜国立大学大学院Y-GSA × 千葉大学園芸学研究院霜田亮祐研究室

教員:
霜田亮祐(千葉大学准教授)
安森亮雄(千葉大学教授)
武田史朗(千葉大学教授)
乾久美子(Y-GSA教授)
寺田真理子(Y-GSA准教授)
佐藤敬(Y-GSA設計助手)

参加学生:
Y-GSA
Nuyuth Pitchapa、亀井美里、Wang Han、谷本かな穂、西尾昂紀、吉田真緒、野中郁弥、田中優衣、河野美紀、前田汐理、小林友哉、寺西遥夏
千葉大学
Lin Tianyi、呂氷妈、徐子毅、李姝䷔、松原祐季、岩田宰、桝富宝弘、川村沙奈、三上奈々、間瀬一希、松原育幹、大木翔生

2021年度は、地域のコモンズとしての「都市の庭(ニワ)」(公園、緑地(農地・畑、庭園など)、神社など)に着目し、このような地域資源における人々のコモンの実践的活動(コモン化=commoning)の場と集住空間との関係性を明らかにし、コミュニティの再構築をめざす「新しい住環境」のデザインを検討すべく、千葉大学の霜田研究室との協働し、リサーチ・ワークショップとデザイン・ワークショップを行った。

「都市の庭」研究の目的

このワークショップでは、「都市の庭」を都市生態学の重要な要素と捉えた上で、コモンズとして機能し得る「都市の庭」と集住空間とのネットワーク化をはかるべく、自然と人間、さらには人間と人間の有機的な関係性を実現する、新しい住環境のデザインを考えることを目標とする。またその住環境における新しい「都市の庭」を定義することを目的としている。

・○○の間としてのコモンズのありかた。
(都市と地域をつなぐあいだの場所、自然環境と都市のあいだ)

・都市の緑を介した居住環境と地域のコミュニティを再構築する新しい住環境のあり方を、都市の生態系を捉え直し、自然、都市、住居の点から提案する。

・地域コモンズとしての「都市の庭」を、居住環境との関わりを探り、「都市の庭」とは何かを定義する。

千葉大学墨田キャンパスでのキックオフ
議論の様子

ワークショップのプロセスとゴール

リサーチ・ワークショップとデザイン・ワークショップでは、下記の主旨・目的のもとにI~VIの内容を行う。

リサーチの対象エリアにおいて、どういう場所に、人々の自発的なコモニング(コモン化)が起こり、「都市の庭」となり得るのか。対象敷地における歴史的経緯、空間、地形的文脈を読み解きながら、これからの居住環境における都市生態(人、自然、生物、建築など)の有機的なネットワークをもつ「都市の庭」としての未来に向けた空間像を定義すべく、空間の新しい図式化(ノーテーション/ダイアグラム作成)を試みた。

I. 都市の居住環境の成り立ちにおける、地形類型と町の類型との関連性の分析(文献)
II. 「都市の庭」の研究対象エリア選定のための事例リサーチ(フィールド・ワーク)
III. 選定した研究対象エリアの空間構造の再読とSoCの配置・分布をリサーチ
※各対象地における自然・文化・空間資源の特徴と由来との関連性を分析
IV. 6つの研究対象エリアにおける「都市の庭」の空間の図式「新しい地図」の作成
この図式化のプロセスでは、文献およびフィールドワークによって抽出されたキーワードをもとに空間的な
ダイアグラムを作成し、「都市の庭」を理論化。
V. 未来の「都市の庭」の空間像を設計するための手がかりの発見
VI. 6つの敷地における設計提案

堀越優希氏による地図の作図エスキス
6つの研究対象エリアにおける「都市の庭」の空間の図式「新しい地図」

リサーチおよびデザイン対象としての6つの敷地

ワークショップでは、フィールドワークにより、自然地形~加工された地面(都市環境の構造)~近現代の都市環境(近現代のファクター)という垂直的な重なりの中に、古来の入会地であるSoC(Space of Commoning)の場や行為である「ニワ・庭」的現象を発見することを試みた。

敷地の選定では、基本的な地形類型(低地~台地~丘陵)、その上に形成されてきた町の類型(下町、港町、谷町、上町、崖線、ニュータウン)に対応する6つの対象地を選定した。フィールドワークによって見いだされた各対象地における自然・文化・空間資源の特徴と由来、そして近現代の都市開発による影響を捉えた上で、住環境における「都市の庭」を設計する。

6つの対象敷地の模型

リサーチおよび設計対象エリア
本研究では6つのエリアを、①地形類型:②自然・文化・空間資源の特徴と由来:③近現代の都市開発による影響、という3つの視点から捉え、選定している。

低地(下町)/京島: 農村由来の路地:木造密集地市街地の防災道路建設
低地(港町)/佃島: 町人地由来の井戸端、水辺:堤防による漁業活動の消滅
台地(上町)/港区三田:大名屋敷・寺町由来の寺院境内:近代的空間と境内地の新たな関係
台地(谷町)/谷中: 町人地由来の川、表裏通り:幹線道路拡幅にともなう開発速度のギャップと暫定空地の発生
台地(崖線)/国分寺崖線: 農村由来の斜面林、湧水:斜面地の宅地造成による台地上と斜面下環境の分断
丘陵(NT)/多摩NT: 農村由来の里地里山:大造成による谷と台地上新開発近隣住区エリアの分断と斜面地のへた地化

6つの敷地 (Google Maps により作成)
京島フィールドワーク
佃島フィールドワーク (陣内秀信氏による案内)
三田フィールドワーク (陣内秀信氏による案内)
谷中フィールドワーク
国分寺フィールドワーク
多摩ニュータウンフィールドワーク (根本哲夫氏による案内)
講評会の様子

Vol.2 デザイン・ワークショップは10月頃に配信予定。