2015年度・国際ワークショップ「ファヴェーラに見るSpace of Commoning」を開催しました

2017.03.07

2015 年度Y-GSA サマーワークショップでは、ETHのシニア・リサーチャーであるライナー・ヘール氏を招き、PUC-Rio(カトリック大学)と共同で、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロにおけるファヴェーラ(スラム街)の研究を行った。テーマはSpace of Commoning である。Space of Commoning とは、現代都市における「共有空間」都市のことを意味し、都市の集合的アクティビティを生み出し、サポートする空間のことである。

ファヴェーラに見るSpace of Commoning

ファヴェーラとは、ブラジルの貧困層が築いた不法占拠地帯、所謂スラム街のことを指す。麻薬密売人や犯罪者の温床となっており、最近では自衛団が入って安全性が高まって、警察との銃撃戦も頻繁に起こる危険地域である。リオ・デ・ジャネイロには950 ものファヴェーラが存在しており、その多くは山の斜面に張り付くように群をなして広がっている。その異様な迫力を持った姿は、都市に建つ高層ビル群とともにリオ・デ・ジャネイロの風景を作りだしている。富裕層と貧困層、フォーマルとインフォーマル、平地と山、このような対立の共存こそがブラジルの、そしてリオ・デ・ジャネイロのアイデンティティとなっているのである。

高台からvidigal を一望する

しかしファヴェーラの住環境はとても良いとは言えない。未だに不法住居が増殖を続ける中、インフラの未整備はもちろんの事、通風や採光の問題も一向に改善されていない。またファヴェーラに住まう人々の背景は非常に多様で、人種も文化も異なっている。しかしその複雑な状況の中でも人々はそこで非常にうまく共存している。それは隣人との関係という小さな繋がりによって成立しているというよりは、もっと大きな共有によって成立しているものに見える。

人々の活動が混じる通り
路地で会話する人々

Space of Commoningを考えるための3つの視点

ここで我々はリオ・デ・ジャネイロにあるファヴェーラの一つ、Favela Vidigal に焦点を当てて、Space of Commoning の研究を行った。ここでは「教育」、「水のインフラ」、「居住」という3つの側面からグループ別に調査を進め、研究、提案を行った。

横浜で行われたワークショップA では、まず初めにETH のライナー・ヘール氏にファヴェーラについてのレクチャーを、続いて南米の文化を研究している文化人類学者の今福龍太氏に、ブラジル映画やブラジル音楽といった地域文化に関するレクチャーをしていただいた。これらの講演を踏まえて学生が、Favela Vidigalの調査、考察を行い、発表を行った。

その後リオ・デ・ジャネイロで行われたワークショップB において、PUC-Rio の学生と共にVidigal を始めとするいくつかのファヴェーラを実際に視察、調査し、案を具体的に構想していった。横浜に引き続き「教育」、「水のインフラ」、「居住」というテーマで、Y-GSA の学生とPUC-Rio の学生がチームを3 つのチームを組み、提案内容を議論し、デザインしていった。

ファヴェーラVidigal と背後にそびえ立つ山

[リオ・デ・ジャネイロ国際ワークショップ概要]

期間  :2016年09月15日〜09月24日
活動拠点:PUC-Rio(Pontifical Catholic University of Rio)

<指導教員>
Rainer Hehl(ETH教授)
Nanda Eskes(PUC教授)
Flavia de Oliveira(PUC教授)
小嶋 一浩(Y-GSA教授)
御手洗 龍(Y-GSA設計助手)
連 勇太郎(横浜国立大学客員助教)
寺田 真理子(Y-GSAスタジオ・マネジャー)

<参加学生>
Y-GSA
梯 朔太郎/白鳥 恵理/植田 有紗/杉浦 岳/瀬島 蒼/中田 寛人/沼田 優花/野村 郁人